多余的話

大沢武彦のブログです。

book

読了、益田肇『人びとのなかの冷戦世界』(岩波書店、2021年)

読んで途中まで行った時、これはやられた、凄い本だなと思った。 人びとのなかの冷戦世界: 想像が現実となるとき 作者:益田 肇 岩波書店 Amazon 本書は、当初、ハーバード大学出版から公刊され、2021年に著者による大幅な加筆改稿・再構成を経て、日本語で出…

読了、長谷川毅『暗闘[新版]スターリン、トルーマンと日本降伏』(みすず書房)2023年

2006年2月にでた旧版を読んでいた。その時も、これは大変に凄い本であり、現代の古典と思っていた。その後の文庫版は実は読んでなかったのだが、新版がでると聞き、日ソ戦争についてあらためて考えてみたいと思っていたので、すぐに買って読んだ。 暗闘 新版…

読了、小田中直樹『歴史学のトリセツ』ちくまプリマー新書、2022年

とても読みやすくて分かりやすい史学史であった。それがとにかく素晴らしい。 歴史学のトリセツ ──歴史の見方が変わるとき (ちくまプリマー新書) 作者:小田中直樹 筑摩書房 Amazon 本書は、歴史をするということの営みの歴史、史学史の本である。そして、そ…

李南央編『李鋭日記』渓流出版社、2008年について

李鋭の日記がスタンフォード大学のフーバー研究所にあることは以前にこのブログで言及したことがあった。 【備忘録】李鋭の日記について https://takeosa75.hatenablog.com/entry/2021/11/24/202316 その話をあちこちの研究会でしたところ、ある方から、李鋭…

読了、E・H・カー『歴史とは何か 新版』岩波書店、2022年

ようやく、少し理解できたような気がすると感じた。 歴史とは何か 新版 作者:E.H.カー 岩波書店 Amazon 歴史とは何か (岩波新書) 作者:E・H・カー 岩波書店 Amazon 思えば、そして多分に漏れず、20幾余年前に、大学の学部で歴史学を専攻した際に最初に読んだ…

読了、柿沼陽平『古代中国の24時間』中公新書、2021年

結構長い間、Kindleの中に積み重ねられていたが、最近、読み始めるととても面白くて割と一気に通読した本である。本書は、主に秦漢時代の上は皇帝から庶民まで、どのような24時間を、そして、どのような生活を過ごしたのかを事細かに描いた良書である。 自分…

読了、小熊英二『基礎からわかる 論文の書き方』講談社現代新書、2022年

基礎からわかる 論文の書き方 (講談社現代新書) 作者:小熊英二 講談社 Amazon いろいろと批判はあるのは、承知しているのだが、小熊英二さんの書くものはけっこう好きである。 例によって全く面識はないのであるが、大作『民主と愛国』の「あとがき」で、な…

読了、西村晋『中国共産党 世界最強の組織』星海社、2022年

大変に興味深く勉強になった本であった。現代中国の基層社会における党政府組織がどのような働きをしているのかを知るのにとても重要な情報を提供している。しかも、記述は分かりやすく大変に論旨が分かりやすい。良書であると思う。 中国共産党 世界最強の…

読了、米原万里『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』角川文庫

これはKindleで読みました。それのおかげで分かったこともあった。 嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫) 作者:米原 万里 KADOKAWA Amazon 割と買ったのはかなり前で、ずっと積ん読してあったなぁと思って、何となく読んだらとても面白くて一気に読んで…

楽天koboの台湾書籍が充実している

僕はどちらかと言えば、Amazon経済圏で生活をしている人間で、本や電子書籍はけっこうAmazonで買うし、Kindleも何台も買った。ところが台湾のある本の紹介を見ると、僕にはさっぱりわからない電子書籍サービスが書いてあったのに加えて楽天のkoboがあったの…

読了、武井彩佳『歴史修正主義』中公新書、2021年

同書で、著者は良い意味で何度も何度も同じことを言っている。 しかし、これはこの問題に対処するには、取らざるを得ない態度ということになるだろうと思った。 歴史修正主義 ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで (中公新書) 作者:武井彩佳 中央…

読了、木村幹『韓国愛憎』中公新書

著名な韓国研究者による自叙伝の形を取りながら、近年の日韓関係を鮮やかに描き出した好著である。Kindle版で購入し、ちょっと読んだら、とても面白い語り口で一気に読み終えた。 韓国愛憎 激変する隣国と私の30年 (中公新書) 作者:木村幹 中央公論新社 Amaz…

読了、田中克彦『草原の革命家たち モンゴル独立への道』中公新書

実は読んでいなくて恥ずかしい本であるが、今頃になって読んで大変に素晴らしいと思った。 原著は、1973年である。奇しくも自分が生まれた年である。しかし、この本の中身は古びていないと思う。絶版なのが大変に惜しまれる。 草原の革命家たち―モンゴル独立…

読了、ブレディみかこ『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』

他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ 作者:ブレイディ みかこ 文藝春秋 Amazon 年末に読んで面白かった。非常に読みやすくて、シンプルだが、決して浅くはない。前に読んだ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー(新潮文庫)』もそうだ…

読了、小野寺史郎『戦後日本の中国観』中公選書、2021年

過日、著者の小野寺史郎さんから御献本頂きました。ありがとうございました。 戦後日本の中国観 アジアと近代をめぐる葛藤 (中公選書) 作者:小野寺史郎 中央公論新社 Amazon で、早速に読みました。以下に述べるように大変に勉強になった良書であることは間…

読了、楊逸・劉燕子「『言葉が殺される国』で起きている残酷な真実」

率直に言うと、同書は、当初、表面的にはよくある所謂「反中国」本のように見え、スルーしていた。この本を読もうと思ったのは、実はたまたま安冨歩さんの以下の書評を読んだからだ。 週刊読書人8月27日号 楊逸・劉燕子著『「言葉が殺される国」で起きている…

読了、高橋伸夫『中国共産党の歴史』

読んだのは結構前なんですが、やっと時間ができたので、ここで今の感想を備忘録的に書いておきます。 中国共産党の歴史 作者:高橋 伸夫 慶應義塾大学出版会 Amazon 中国共産党の百年ということで、最近、多くの中国共産党に関する著作がでているが、前回に紹…

読了、石川禎浩『中国共産党、その百年』筑摩選書、2021年

中国共産党、創設、百年である。そして、おそらくその百周年をねらって、中国大陸はもとより、世界中で中国、そして中国共産党の歴史を描く本がでるのであろうなと思っていた。 で、おそらく、日本においても、いや世界においても、中国共産党の歴史、百年を…

読了、安田峰俊『八九六四 完全版 「天安門事件から香港デモへ」』

前の通常版も読んで、大変に感銘を受けた本である。 本書は、大宅賞と城山賞のダブル受賞をしたのも当然の著作を新書化しただけなく、2019年の香港デモの章を新たに加えた「完全版」となる。 思い出話をすると、自分は天安門事件の時、高校生であり、少し中…

読了、ケン・リュウ「歴史を終わらせた男−ドキュメンタリー」

これは傑作。ヒューゴ&ネビュラ賞ノヴェラ部門およびスタージョン賞最終候補作でもある。 実は、ケン・リュウの他の作品は、僕のKindle内で積ん読になっていたのだが、どこかで同作の評判を聞いて関心を持ち、Kindleで購入。初めてのケン・リュウ作品だった…

読了、グレン・グリーンウォルド『暴露ースノーデンが私に託したファイル』

長らく積んであったが、少し思うところがあって、読み始めて、大変に面白くて、一気に読了でした。 本書の指摘は大変に重い、しかし、今の世界を考える上での非常に重要な指摘をしていると思った。 暴露:スノーデンが私に託したファイル 作者:グレン・グリー…

読了、安田峰俊『「低度」外国人材』角川書店

本書はかなりすごい本である。日本にいる外国人や技能実習制度という単語に少しでも興味があったら、必読の本と言えよう。 これを読み終わった時、ありきたりだが、悪だとか不正というのは存外に近くにあって、自分はそれを知らないふりをしているか、それに…

読了、菊池秀明『太平天国−皇帝なき中国の挫折』岩波新書

かつてというか、今でもそうなのだと思うが、歴史学専攻で、中国の歴史をやってみたいという学生に必ず勧める本というのがある。例えば、宮崎市定『科挙』なんかがそれにあたり、最初に読むけれど、勉強が進んで読んでも、ひいては歳をとった今でも、読んで…

いただきもの、ありがとうございます!奥村哲『文化大革命への道』笹川裕史編『現地資料が語る基層社会像』

最近、立て続けに御本を頂きました。ありがとうございます。 奥村哲先生、ありがとうございます。先生の授業で読んだ薄一波の回想録が懐かしいです。 勉強させて頂きます。 文化大革命への道: 毛沢東主義と東アジアの冷戦 作者:哲, 奥村 発売日: 2020/11/30 …

読了、ロビーロバートソン『ロビー・ロバートソン自伝 ザ・バンドの青春』

意外と言っては失礼かもしれないが、結構、読ませるし、面白い自伝だった。 ロビー・ロバートソン自伝 ザ・バンドの青春 作者:ロビー・ロバートソン 発売日: 2018/09/28 メディア: 単行本 やっぱ、ミュージシャンの自伝・伝記って割と面白い。有名人が出てき…

読了、岡本隆司『シリーズ中国の歴史⑤ 「中国」の形成 現代への展望』岩波書店、2020年

岩波新書のシリーズ中国の歴史全五巻の最後を飾る岡本隆司さんの『「中国」の形成』である。このシリーズ不勉強で、まだ全部を読んでいないのですが、やはり一番関心のある岡本隆司さんの本を先に読んでしまった。 明末から現代、習近平政権までをいっきに語…

読了、松沢裕作『自由民権運動−<デモクラシー>の夢と挫折』岩波書店、2016年−

大変に面白くて、勉強になる本でした。 それにしても、前に読んだ『生きづらい明治』もそうでしたが、この著者は、本を書く時のロジックが大変に明晰で分かりやすく、そこが本書の優れた点の一つでないかと思いました 自由民権運動の始まりを戊辰戦争から捉…

「抗日戦争と近代日中関係文献データベース(抗日戦争与近代中日関係文献数拠平台)」が便利になっている

もう皆さんご存じなのかもしれませんが、僕は昨日に気づいて大変に驚いたので、備忘録的に記しておきます。 中国大陸における近現代資料のデータベースである「抗日戦争と近代日中関係文献データベース(抗日戦争与近代中日関係文献数拠平台)」は、2017年か…

読了、飯島渉『感染症の中国史』中公新書、2009年

それにしても2009年という11年も前に出版されたのに、新型コロナウイルスのおかげで、まるで現在の問題を記したものとなっているのが、本書である。 本書は、公衆衛生という観点から、おおよそ19世紀後半から現代までの東アジアと感染症の問題を描いている。…

読了、劉慈欣『三体』早川書房、2019年

久しぶりに、壮大でエンターテインメント精神に溢れたSF小説を読んだという、そんな高揚感に包まれた。 昨日、Twitterでも呟いたが、今話題の中国SFである劉慈欣『三体』早川書房、2019年のことである。 一応、中国近現代史に関心を持つものとして、中国SFが…