多余的話

大沢武彦のブログです。

読了、王力雄『黄禍』集広舎、2015年

いやー、この本もかなり遅まきながら読んだが、かなり面白かった。

 

黄禍

黄禍

 

 

王力雄の『黄禍』だ。いささか時代がかっており、通俗的と言えばそうなのだが、それを打ち破るようなパワーがこの作品にはあると思う。

 

同書は、著者によれば、単なる小説ではない。著者である王力雄が、1991年という昔、おそらくは天安門事件後に、彼なりに中国の未来を憂慮し、どのようなことが起こるのかを書いたものが本書になるという。そこには中国の「崩壊」も描かれている。そして、それは、単なるそこらにある中国崩壊論とは大きく一線を画したものである。

 

中国「崩壊」と聞いて、そんなこと簡単に起こり得ないと思う人、それは僕でもあるのだが、しかし、そこで描かれる未来予想図は、真に迫った感をあたえ、大変に興味深い。

 

そして、堅牢かつ強固に見える中共政権であるが、しかしそれが故に、むしろ瓦解しやすいもろさがあるというモチーフは、彼の最新作『セレモニー』でも共通している。さらに「新疆」もこの本では重要な役割と与えられている。

 

彼の問題関心は、ずっと繋がっているのだということを改めて実感した。この現代において、非常に希有な作家ではないかと思った。

セレモニー

セレモニー

 

 参考

『黄禍』著者・王力雄氏から日本の読者へ |