多余的話

大沢武彦のブログです。

読了、麻田雅文『日露近代史-戦争と平和の百年』講談社現代新書

長らく積ん読であったが、最近やっと読み終わりました。

 

幕末から第二次世界大戦終結までの日本とロシアとの外交を主に、伊藤博文後藤新平松岡洋右という三人の政治家を通して描く、新書であるが大作と言っても良いと思います。

 

まず、こうした通史を書く際には、やはりいろいろなところへの目配りが重要になると思うが、本書の素晴らしいところは、膨大な日本語文献だけでなく、ロシア側の反応や見方も記しているところである。当たり前かもしれないが、こういう地道な努力がなされている本は意外に少ないと思う。その意味で非常にお薦めできる通史になっている。

 

文書中に挿入される写真も、興味深いものを多く使用しており、アメリカ議会図書館のものが多いのが、個人的にあまり見たことなく、楽しめた。

 

あと、これは自分の読み方かもしれないが、3人の主人公とも言うべき政治家がどのような関係にあるのか、後者2人については前の人物の業績をどのように意識しつつ自分の政策を実現しようとしたのかを描かれている部分が大変に面白かった。本書は日露関係通史としても大変に優れた本であるだけなく、「歴史の教訓」という普遍的なテーマを、どのように考えるのかという、結構重要な論点を提示しているようにも思った。

 

戦後編も当然、構想されているかもしれません。是非とも読みたい。楽しみです。

 

日露近代史 戦争と平和の百年 (講談社現代新書)

日露近代史 戦争と平和の百年 (講談社現代新書)

  • 作者:麻田 雅文
  • 発売日: 2018/04/19
  • メディア: 新書