多余的話

大沢武彦のブログです。

アメリカから遠く離れて

更新にえらい時間がかかった。ちょっと、まともな文章を書こうとすると時間がかかってしまう。

さて、華氏911だ(以下、ネタばれありなので、ご注意を)。
僕は初日に見に行ったので、かなり人が並んでいた。客層はちょっと年齢層が高いことを除けば、意外と普通であった。それでも、自分も含めてどういうモチベーションで華氏911を初日に見ようなんて思うかは少し気になったが。

見終わった後の率直な感想を言えば、うーんと頭を抱えたというのがホントのところだ。

映画は、およそ二つのパートに分かれる。前半が、ブッシュ家とサウジアラビア王族やタリバンとの関係を描く。後半が、イラク戦争突入後のドキュメンタリーで、戦場と銃後のアメリカ社会が描かれている。

映像的或いは情報的には前半が面白い。一緒に見に行った友人によれば、書籍版の『アホでマヌケなアメリカ白人』と結構かぶっているらしい(未確認)。前半部の白眉は、やはり911事件の連絡を受けたブッシュ大統領の姿である。おそらくはどうしていいかわからずに絵本を読んでいる姿は衝撃的で、「映像」というもののの強さを実感した。そして、ムーアらしいユーモア(おちょくり)も多い。

だが、この映画は後半にシリアスに転換する。戦場で死ぬアメリカ人兵士達、貧しい街で若者を戦場へとリクルートする様子、そして出征した息子を失った中年女性等々。ここでの映像は、「情報」として聞き慣れ、或いは見慣れたものだとしても、心に迫ってくるものがあった。

逆に言えば、そこにはムーアのセールスポイントであるおちょくりに近いユーモアは無く、率直に言えばベタであり、過度に感情的な演出が多かった。それは、この映画の大きな欠陥とも言えるし、ドキュメンタリーとしての完成度を損なっているとすら思う。

しかし、日本人であり限りなく当事者とは言えない「僕」のそうした感想は、おそらく的はずれなのではないかとも感じた。やはりアメリカ人にとってみれば、後半部こそが衝撃的であったのかもしれない。そして、ムーアは何よりもアメリカ人を対象としてこの映画を作っているのだ。そうであれば、この映画の価値は、如何にアメリカ人の心を揺さぶるのかという点で決まるのではないかとも言える。

では、そこで「日本人」たる僕は、どういうスタンスで「評価」すべきなんだろうか。それが頭を抱えてしまった理由である。