多余的話

大沢武彦のブログです。

2022-01-01から1年間の記事一覧

読了、小田中直樹『歴史学のトリセツ』ちくまプリマー新書、2022年

とても読みやすくて分かりやすい史学史であった。それがとにかく素晴らしい。 歴史学のトリセツ ──歴史の見方が変わるとき (ちくまプリマー新書) 作者:小田中直樹 筑摩書房 Amazon 本書は、歴史をするということの営みの歴史、史学史の本である。そして、そ…

読了、油井正一『ジャズの歴史物語』

これまでもっぱら昔のロック大好き人間だったのですが、歳をとって成熟したからなのか何なのか、最近はようやくモダンジャズの素晴らしさが分かってきた。マイルス・ディビスは言うまでもなくセロニアス・モンクとかウェイン・ショーター、アート・ブレイキ…

ガンズ・アンド・ローゼズ来日公演 さいたまスーパーアリーナ 11月5日を見た

コロナも何というか一段落がついて、沢山のアーティストが来日公演をするようになり、ライブの日常が戻ってきた感じがある。そして、ついにガンズ・アンド・ローゼズも5年ぶりの来日である。前回も行っている僕ではある。 gunsnrosesjapantour.com 前回は開…

李南央編『李鋭日記』渓流出版社、2008年について

李鋭の日記がスタンフォード大学のフーバー研究所にあることは以前にこのブログで言及したことがあった。 【備忘録】李鋭の日記について https://takeosa75.hatenablog.com/entry/2021/11/24/202316 その話をあちこちの研究会でしたところ、ある方から、李鋭…

読了、E・H・カー『歴史とは何か 新版』岩波書店、2022年

ようやく、少し理解できたような気がすると感じた。 歴史とは何か 新版 作者:E.H.カー 岩波書店 Amazon 歴史とは何か (岩波新書) 作者:E・H・カー 岩波書店 Amazon 思えば、そして多分に漏れず、20幾余年前に、大学の学部で歴史学を専攻した際に最初に読んだ…

読了、柿沼陽平『古代中国の24時間』中公新書、2021年

結構長い間、Kindleの中に積み重ねられていたが、最近、読み始めるととても面白くて割と一気に通読した本である。本書は、主に秦漢時代の上は皇帝から庶民まで、どのような24時間を、そして、どのような生活を過ごしたのかを事細かに描いた良書である。 自分…

サマーソニック2022に行ってきた

今年は初日だけ参加してきた。実はサマソニはレッチリが出た2019年に初参加であり、フジロックと比べて思い入れはそれほどないが、備忘録として、記事を残しておきたい。 総論 どうしてもフジロックと比べてしまうが、やはりサマソニのような都会型フェスは…

フジロック2022に行ってきた

総論 表題のとおりである。いろいろと大変なことがあったが、フジロック2022に無事に行って帰ってきた。 前回が2019年だったので、3年ぶりのフジロックだった。 今回、まず特筆すべきは、3日目の最後に退場する時に雨が降った以外は、ずっと晴れていた希有な…

覚え書き、1945年8月、スターリンが毛沢東に送った電報をめぐって

将来はひょっとすると論文か雑文か何かにもなるかもしれないが、取りあえずの暫定的なメモ。 中国とソ連との関係を調べてみると、驚くような基本的な文書が、2022年の現在に至っても、なお見られないと言うことがある。その代表例の一つが、日本の敗戦後にス…

映画「リコリス・ピザ」は、なぜにそんなに素晴らしいのか

言いたいことは表題の件につきるのだが、3日前に、1990年代から現代まで、現代アメリカで最も信用できる映画監督ポール・トーマス・アンダーソンの新作「リコリス・ピザ」を見てきた。 それを見た後、ずっと頭の中に同映画のことがあり、「素晴らしかったな…

備忘録、レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」「ロング・グッドバイ」「長い別れ」第4章をめぐって

高校時代は、早川ミステリが大好きだった。大変にベタで恐縮だが、レイモンド・チャンドラーには、大変にはまって、かなり読んだし、次の本も読んでいろいろ勉強になった。たぶん、実家にあるだろうが、何だかまた読みたくなった。 ○『レイモンド・チャンド…

読了、小熊英二『基礎からわかる 論文の書き方』講談社現代新書、2022年

基礎からわかる 論文の書き方 (講談社現代新書) 作者:小熊英二 講談社 Amazon いろいろと批判はあるのは、承知しているのだが、小熊英二さんの書くものはけっこう好きである。 例によって全く面識はないのであるが、大作『民主と愛国』の「あとがき」で、な…

読了、西村晋『中国共産党 世界最強の組織』星海社、2022年

大変に興味深く勉強になった本であった。現代中国の基層社会における党政府組織がどのような働きをしているのかを知るのにとても重要な情報を提供している。しかも、記述は分かりやすく大変に論旨が分かりやすい。良書であると思う。 中国共産党 世界最強の…

読了、米原万里『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』角川文庫

これはKindleで読みました。それのおかげで分かったこともあった。 嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫) 作者:米原 万里 KADOKAWA Amazon 割と買ったのはかなり前で、ずっと積ん読してあったなぁと思って、何となく読んだらとても面白くて一気に読んで…

楽天koboの台湾書籍が充実している

僕はどちらかと言えば、Amazon経済圏で生活をしている人間で、本や電子書籍はけっこうAmazonで買うし、Kindleも何台も買った。ところが台湾のある本の紹介を見ると、僕にはさっぱりわからない電子書籍サービスが書いてあったのに加えて楽天のkoboがあったの…

読了、武井彩佳『歴史修正主義』中公新書、2021年

同書で、著者は良い意味で何度も何度も同じことを言っている。 しかし、これはこの問題に対処するには、取らざるを得ない態度ということになるだろうと思った。 歴史修正主義 ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで (中公新書) 作者:武井彩佳 中央…

読了、木村幹『韓国愛憎』中公新書

著名な韓国研究者による自叙伝の形を取りながら、近年の日韓関係を鮮やかに描き出した好著である。Kindle版で購入し、ちょっと読んだら、とても面白い語り口で一気に読み終えた。 韓国愛憎 激変する隣国と私の30年 (中公新書) 作者:木村幹 中央公論新社 Amaz…

読了、田中克彦『草原の革命家たち モンゴル独立への道』中公新書

実は読んでいなくて恥ずかしい本であるが、今頃になって読んで大変に素晴らしいと思った。 原著は、1973年である。奇しくも自分が生まれた年である。しかし、この本の中身は古びていないと思う。絶版なのが大変に惜しまれる。 草原の革命家たち―モンゴル独立…

読了、ブレディみかこ『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』

他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ 作者:ブレイディ みかこ 文藝春秋 Amazon 年末に読んで面白かった。非常に読みやすくて、シンプルだが、決して浅くはない。前に読んだ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー(新潮文庫)』もそうだ…