多余的話

大沢武彦のブログです。

2020-01-01から1年間の記事一覧

読了、藤野裕子『民衆暴力-一揆・暴動・虐殺の日本近代』中公新書

大変に面白い本であった。お薦めです。 民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代 (中公新書) 作者:藤野 裕子 発売日: 2020/08/20 メディア: 新書 日本の近代を描く場合、いわゆる政治的エリートを中心にして、その近代化を描くような物語があると思う。本書で描…

読了、東浩紀『ゲンロン戦記』

専攻も仕事も全く異なるが、やはり世代が近いせいか、東浩紀さんのお仕事は良くも悪くも気になっている人間の一人である。 『郵便的不安たち』も、『存在論的、郵便的』も読んでいる。 その意見に同意できないことも多々あるが、何だかんだで気になって、結…

いただきもの、ありがとうございます!奥村哲『文化大革命への道』笹川裕史編『現地資料が語る基層社会像』

最近、立て続けに御本を頂きました。ありがとうございます。 奥村哲先生、ありがとうございます。先生の授業で読んだ薄一波の回想録が懐かしいです。 勉強させて頂きます。 文化大革命への道: 毛沢東主義と東アジアの冷戦 作者:哲, 奥村 発売日: 2020/11/30 …

読了、ロビーロバートソン『ロビー・ロバートソン自伝 ザ・バンドの青春』

意外と言っては失礼かもしれないが、結構、読ませるし、面白い自伝だった。 ロビー・ロバートソン自伝 ザ・バンドの青春 作者:ロビー・ロバートソン 発売日: 2018/09/28 メディア: 単行本 やっぱ、ミュージシャンの自伝・伝記って割と面白い。有名人が出てき…

読了、岡本隆司『シリーズ中国の歴史⑤ 「中国」の形成 現代への展望』岩波書店、2020年

岩波新書のシリーズ中国の歴史全五巻の最後を飾る岡本隆司さんの『「中国」の形成』である。このシリーズ不勉強で、まだ全部を読んでいないのですが、やはり一番関心のある岡本隆司さんの本を先に読んでしまった。 明末から現代、習近平政権までをいっきに語…

読了、富田武『日ソ戦争 1945年8月』みすず書房、2020年

これは凄い力作である。そして、この本の執筆が可能になったのは、ロシアと日本のデジタルアーカイブが進展したことによるものであることが、非常に感慨深かった。 日ソ戦争 1945年8月――棄てられた兵士と居留民 作者:富田 武 発売日: 2020/07/18 メディア: …

読了、劉慈欣『三体Ⅱ 黒暗森林』早川書房、2020年

これも大変に面白かった。 ごった煮感というか、何が起こるか分からないゾクゾク感は前作の方が上だと思うが、スケールの大きいSFとしては本作の方が面白いのではないだろうか。宇宙艦隊まで出てきて、銀英伝まで引用されている。 人類を遙かに超える大きな…

読了、松沢裕作『自由民権運動−<デモクラシー>の夢と挫折』岩波書店、2016年−

大変に面白くて、勉強になる本でした。 それにしても、前に読んだ『生きづらい明治』もそうでしたが、この著者は、本を書く時のロジックが大変に明晰で分かりやすく、そこが本書の優れた点の一つでないかと思いました 自由民権運動の始まりを戊辰戦争から捉…

「抗日戦争と近代日中関係文献データベース(抗日戦争与近代中日関係文献数拠平台)」が便利になっている

もう皆さんご存じなのかもしれませんが、僕は昨日に気づいて大変に驚いたので、備忘録的に記しておきます。 中国大陸における近現代資料のデータベースである「抗日戦争と近代日中関係文献データベース(抗日戦争与近代中日関係文献数拠平台)」は、2017年か…

読了、飯島渉『感染症の中国史』中公新書、2009年

それにしても2009年という11年も前に出版されたのに、新型コロナウイルスのおかげで、まるで現在の問題を記したものとなっているのが、本書である。 本書は、公衆衛生という観点から、おおよそ19世紀後半から現代までの東アジアと感染症の問題を描いている。…

読了、劉慈欣『三体』早川書房、2019年

久しぶりに、壮大でエンターテインメント精神に溢れたSF小説を読んだという、そんな高揚感に包まれた。 昨日、Twitterでも呟いたが、今話題の中国SFである劉慈欣『三体』早川書房、2019年のことである。 一応、中国近現代史に関心を持つものとして、中国SFが…

読了、麻田雅文『日露近代史-戦争と平和の百年』講談社現代新書

長らく積ん読であったが、最近やっと読み終わりました。 幕末から第二次世界大戦終結までの日本とロシアとの外交を主に、伊藤博文、後藤新平、松岡洋右という三人の政治家を通して描く、新書であるが大作と言っても良いと思います。 まず、こうした通史を書…

読了、李鋭『中国民主改革派の主張-中国共産党私史』岩波現代文庫、2013年

副題の方が本書の内容をよく表している論集と思いました。 著者の李鋭氏は中国共産党の老幹部で最も先鋭的な思想を持つ民主改革派の重鎮である。 1958年に毛沢東の秘書となったが、1959年の廬山会議、66年からの文化大革命で批判、投獄された経験を持つ。 現…

中共重要歴史文献資料彙編について(その4)

またまた、表題の資料集についてである。以下、覚え書き。 とある研究会で、同資料集が、UCLAだけでなく、オーストラリア国立図書館にも所蔵されていることを聞いた。 そうこうしているうちに、Twitterでもつぶやいたが、川島真先生の横浜日記を読むとその資…

読了、関智英『対日協力者の政治構想』名古屋大学出版会、2019年

本書を読んだ時、この分野のマイルストーンとなるべき研究書であり、今後、日中戦争期を研究するであろう多くの人々にとって必読の書となるであろうと思った。 本書は、日中戦争後に国民政府や中国共産党から「漢奸」と呼ばれて批判された人々、すなわち日中…