多余的話

大沢武彦のブログです。

読書メモ

結構前に読んだ本。

靖国神社 せめぎあう<戦没者追悼>のゆくえ

靖国神社 せめぎあう<戦没者追悼>のゆくえ

靖国神社の中の「平和主義」を探るという類書には無いスタンスに非常に感銘を受けました。同書のように、現時点から見落としがちな過去の「可能性」を丹念に探るのは、歴史学の得意とする手法なのだと思います(勿論、それが「可能性」に過ぎなかった理由も検討しなければならないわけですが)。

ただ、靖国神社の「平和主義」が変質し最終的に失われていく理由が少し気になりました。以下、該当部分を引用します。

その要因は、内発的には靖国神社の自己変革・宗教改革が不十分で、過去の戦争とその中で靖国神社の果たした役割に対する自覚的な反省が足りなかったからである。さらに国家の戦争犠牲者に対する援護・補償政策が、戦争に対する批判や反省に立脚していないことが、これを後押しした。そして最終的には、戦後の靖国神社がその基盤とした遺族の意識変化が、靖国神社の平和主義の掘り崩しを支えることになる(同上書、256頁)。

まだきちんと言語化できていないのですが、十分な「自己変革」或いは自覚的な「反省」というのは果たしてどの程度可能だったのか、或いは、なぜそうしたことができないのか、そしてそれを阻むものとは何かと感じました。これは自分でも少し考えてみたいなとも思っております。

台湾総統列伝―米中関係の裏面史 (中公新書ラクレ)

台湾総統列伝―米中関係の裏面史 (中公新書ラクレ)

mengyouさんに勧められて読む。これはなかなか良い台湾現代史の本だと思います。

歴代台湾総統に対するトリヴィアな知識も含めた適切な論述、最後に日本の「親日台湾」イメージをたしなめるあたりにも好感を持ちました。お勧めです。

国境を越える歴史認識―日中対話の試み

国境を越える歴史認識―日中対話の試み

日中間の若手研究者による成果。1章と2章、11章を読み終える(ちょうど講義で靖国神社についての質問があったので11章を一番最初に読みました)。非常勤で中国近現代史を教えている身にとっては、ついこの前に講義した内容を別の角度から捉え直されていて大変に刺激的でした。後日、取り上げるかもしれません。

中国の地域政権と日本の統治 (日中戦争の国際共同研究)

中国の地域政権と日本の統治 (日中戦争の国際共同研究)

こちらは日本・中国・アメリカの共同研究の成果(未購入)。
最近、こうした国際的な学術交流の成果が続々と出版されることの意味は、少し考えた方が良いのかなと思いました。