多余的話

大沢武彦のブログです。

読了、田中克彦『草原の革命家たち モンゴル独立への道』中公新書

実は読んでいなくて恥ずかしい本であるが、今頃になって読んで大変に素晴らしいと思った。

原著は、1973年である。奇しくも自分が生まれた年である。しかし、この本の中身は古びていないと思う。絶版なのが大変に惜しまれる。

 

冒頭が、「社会主義革命は民族を解放するか」と、当時としてはかなり先駆的かつ現代においても重要な問題提起がなされる。そして、「大国」であるソ連と中国、そして、日本に翻弄されつつ、自己の民族と国家のために闘う草原の革命家たちを、生き生きと描いているのがこの本の魅力である。

 

生半可な知識では、ソ連の「傀儡」と思いがちなモンゴルの近現代史を、「主体的」かつ「等身大」に描いているところが大変に興味深い。例えば、モンゴルの英雄であるスフバートルが、僧であったことなどさえ知らなかった僕である。そして、モンゴルの革命に参加した人々がそれぞれ顔をもった「個人」として、描かれているところも素晴らしいと思う。

 

また、近代を考える上で、必須となる「言語」と「文学」についても、多くの言及がなされているところも、興味深い。本書の射程は長く、現代的でさえあると言えるのではないだろうか。