多余的話

大沢武彦のブログです。

高文謙『周恩来秘録』文藝春秋社、2007年(その2)

今日は燃え尽きてゴロゴロしながら、高文謙『周恩来秘録』を読み始める。ちょうど文化大革命の勃発前まで読む。これはなかなか面白い。


例えば、毛沢東が遵義会議で党の指導的な地位を獲得したという「定説」を退けている点や、毛が王明を抑え党内で主導権を握る際に、ミフの失脚とディミトロフの支持が非常に重要であったという点などはさすがに最新の研究成果を踏まえていると思われる(例えば、楊奎松『毛沢東与莫斯科的恩恩怨怨(毛沢東とモスクワの恩讐)』)。


筆者がもともと中国共産党党中央文献室にいたこともあって、初見の非常に興味深い史料がいくつも紹介されている。この点が本書の見所の一つであろう。


読んだところで特に印象に残っているのは、延安整風運動時期の周恩来自己批判の部分で、非常に生々しく、何とも言えない重さを感じた。注釈を見ると、「周恩来の党中央政治局会議における発言要点、1943年11月13日、手書き」とあり、まさに党の中央文献室でないと見られないもので大変に興味深い。未読の文化大革命の記述もすごく期待できそう。


ちなみに、本筋と異なるところで、非常に気になったのは、何故に上巻の注釈が下巻にあって、下巻の注釈が上巻にあるのかという点。上下2冊を常に傍においておかないといけないのは、読者にとってちょっと親切でない気がするが、別に上巻の注釈は上巻で良いのではないだろうか?上下巻2冊を買わせる戦略なのかなぁ。

もう一つは、注釈で書籍を引用する際に、発行年が書かれていない点。例えば、楊奎松『毛沢東与莫斯科的恩恩怨怨(毛沢東とモスクワの恩讐)』は、最初に出たバージョンと、つい最近に増補したバージョンとの二つがあるのだが、発行年が書かれていないので、どちらのバージョンかすぐに判断できないという事態になってしまう。加えて、いつ頃にでた資料集或いは研究書をもとにした記述なのかというのも重要な要素だと思うので、やはり出版年が書かれていないのは惜しまれる(注釈がPDFとなるよりは良いのかもしれませんが)。

周恩来秘録 上

周恩来秘録 上

周恩来秘録 下

周恩来秘録 下