多余的話

大沢武彦のブログです。

読了、高橋伸夫「高崗事件再考」

別段、自分に限ってではないと思うが、普段、僕にはいくつか関心のあるテーマがあって、本を買って読んだり調べ物をしている。その関心の一つに、高崗事件がある。高崗事件とは、1954年春、中国東北地方の実力者と知られていた高崗が、饒漱石とともに粛清された事件をさす。中華人民共和国成立後の初めての最高指導者の粛清となった。

 

縁があって『20世紀満洲歴史辞典』では、「高崗」の項目を書かせて頂いた。しかし、この事件については、何だか釈然としないものが多く、関心をもって中国大陸の研究書などを買っていた。

二〇世紀満洲歴史事典

二〇世紀満洲歴史事典

 

 で、前に書いた『中共重要歴史文献資料匯編』の中にもこの事件に関する資料もあり、全部コピーして、よしよし、このテーマで何か論文か研究ノートでも書けないかなー、と思っていたところ、そんな僕のちっぽけな思惑などをあっさり乗り越えるレベルの論文がでてしまいました。それが高橋伸夫さんの「高崗事件再考」である。

 

ci.nii.ac.jp

 

もう、読みながら、やられたーーと唸ってしまいました。僕の知らない資料や論文をたくさん使っている、しかも丁寧に。日本だけでなく、世界的に見ても、この事件に関する決定的な論文ではないかと思いました。最後に高橋さんが提示するこの事件のストーリーは魅力的であり、これを乗り越えるのはえらい大変だと思った次第です。