文化大革命を中国一国史で考えるのではなく、グローバルな戦後の社会主義・共産主義運動の中に位置づけようとした意欲作である。
文化大革命を国際的に論じる場合、これまで重視されたのは、ベトナム戦争との関連やヨーロッパ・アメリカの1968年運動等であったが、本書の類書にはない特徴は、インドネシアと、そして日本に焦点をあてて論じているところだ。
インドネシアとの関係について、とりわけ9・30クーデター事件について詳細に書かれていて、率直に言えば不勉強であまり考えたこともなくて、大変に勉強になった。また、この時期に中国共産党と日本共産党との関係が分裂したことも考えねばならないとする論点も面白く、いろいろと多くのことを気づかされた。
あとは、個人的に最も印象に残っているのが、日本の山口県のマオイストに関する記述であり、現在まで活動していることと、その方が戦後の満洲で日本人の帰国運動に関わっている点は大変に興味深く読んだ。さらに、この人が戦後の満洲でどのような中国共産党体験をしたのかは凄く気になった。
この本だけで文化大革命の全てを理解しようとすれば不満が残るかもしれないが(著者はそんなことを意図していないとは思うが)、タイトルの通り世界史のなかから文革の新たな側面を当てようとした点は大変に勉強になった。
戦後、中国の国際関係史の専門家による書評が特に待たれると思う。