岩波新書のシリーズ中国の歴史全五巻の最後を飾る岡本隆司さんの『「中国」の形成』である。このシリーズ不勉強で、まだ全部を読んでいないのですが、やはり一番関心のある岡本隆司さんの本を先に読んでしまった。
明末から現代、習近平政権までをいっきに語り尽くす極めて意欲的な本である。語り口も平明で面白く、割と一気に読み終えた。清代の社会経済を恐らく岸本美緒さんや黒田明伸さんの成果等を中心として、非常に分かりやすく描いているところが個人的に大変に勉強になった。
そして、岡本隆司さんが描く、中央と漢人を中心とする民間社会との二元化、そして後者の肥大化という図式は大変に興味深かった。と言いつつも、日中戦争と人民共和国を経て、その両者の「一体化」は強固になったか、「変質」したようにも考えている自分としては、どうかなと思うところもあるが、今後も注目すべき議論であることも確かであると感じた。