多余的話

大沢武彦のブログです。

アメリカン・ユートピアを見てきた(ややネタバレあり)

トーキングヘッズにも、デイヴィッド・バーンにもそれほど思い入れはない人間であったのだが、この映画は大変に素晴らしい!

 

僕は劇場で思わず拍手をして歓声をあげてしまったのであるが、そういうお客さんは他にもいただろうし、事実、映画が終わったら僕以外からも多くの拍手と歓声が少し聞こえた。

 

トーキングヘッズと言えば、やはりデイヴィッド・バーンである。

ちょっと記憶が定かではないのだが、たしか、渋谷陽一さんの記事だったと思うが、デイヴィッド・バーンにインタビューをする際にどんな凄い頭の切れる男がやってくるのかと思って身構えていたところ、めちゃくちゃ優柔不断で、ああも言えるし、こうも言えるし、とにかく考えてくれるのだが、さっぱり面白くない人であったというような記事であった。

 

でも、本当に知性溢れるというのは、そういう人を指すのではないか、物事を鋭利にすっぱりと分かったようなことを言ってくれるというのは、どこかで考えを放棄しているのではないかというのは、僕は当時思ったし、今も割とそう思っている。

 

そして、今回の映画である。この映画で、デイビッド・バーンはものすごい細部にいたるまで考えに考え尽くしてショーを行っている。しかし、そういう計算高さは、一方で予定調和を生み、むしろ偶然や即興によるダイナミズムすら損なう場合もある。だが、デイヴィッド・バーンはそれも分かった上で、どうすればエキサイティングな偶然性さえも演出できるのかを考え抜いたかのようなショーであった。

 

最後の方の、とある有名女性アーティストのカバーも含め、この映画を貫くのはデイヴィッド・バーンのとてもシリアスなメッセージであるが、それすらもエンタテインメントに昇華する時代性と知性が素晴らしい。音楽はもとより、ミュージカルのファンもおそらくものすごい楽しめるショーになっていると思う。

 

次回は、フジロックのグリーンステージで爆音で見たいな。とにかく素晴らしい。お薦めです。

 

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