多余的話

大沢武彦のブログです。

香港日記(その4)

430日(火)

香港での調査の最終日。朝から中国研究服務中心へ行く。『内部参考』を見続けるが、午前中でコピーの制限に達してしまい。残りの部分はせっせと筆写する。最初は、くまなくブラウジングしていたが、その後、とても全部はコピーできないという当然のことを悟り、そして、あるキーワードが気になり、タイトルのDBで検索してみると、なかなか面白そうな資料が見られた。

 

まだまだ実証的ではないが、なんとなく資料を見てみると、最初は「流言」「反革命」と続き、「細菌」「三反」になり、最後は「自殺」の資料ばかりを見ていた。あとは、これが当時の高級幹部達の閲覧用の資料とすると「問題」ばかりがクローズアップされており、ややセンセーショナルな感じがして、これは当時の中国の「現実」の一部ではあるけれど、そればかりなのかなという素朴な疑問を抱いた。当たり前であるが、別の資料とも付き合わせて使うのが良いと言うことになるかな。とは言いつつも、息をのみつつ資料を読むという久方ぶりに至福の体験をすることになった。

 

中国研究服務中心のスタッフの方は皆様、大変に親切で、閲覧・研究環境も大変に素晴らしく、いっぺんにこの研究所のファンになった。ほんとにまた訪れたいものである。

 

調査を終えて、ビクトリアピークに向かう。途中、ピークトラムが、なんと止まっているという張り紙に動揺しつつも、バスが運行していると言う情報を得て、Googlemapでなんとか山頂まで登るバス停にたどり着く。夜の帳が見え始めたころに行ったが、夜景が見え始めると、大変に素晴らしかった。確かにこれは一見の価値はあるなぁと思った。

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その後、油麻地の屋台に行く。ごちゃごちゃした喧噪が、香港ぽさを感じる。遅い夕食を取るが大変に美味であった。よく分かりませんが、味も香港っぽい様な気がしました。

 

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ホテルに戻り,早速休む。明日は休息日。

香港日記(その3)

428日(日)

 香港からマカオに向かう。上環からターボジェットに乗る。マカオに着くが、当初、バス停が分からず、タクシーに乗って移動する。Googlemapが使えなくなったので、久方ぶりに地球の歩き方にそって、最初に馬閣廟を見に行く。なかなかに面白かった。その後、次の場所に移動しようとするが、地球の歩き方ではよく分からない。普段、いかにグーグルマップに頼っているかがよく分かる。迷いながら、たどり着いた下町で、エッグタルトと飲茶にするがどちらも当たりで、これで目的の半分は果たしたかなと思うぐらいであった。

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その後、タクシーに乗ってセドナ広場へ行き。周辺を観光する。

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ここは香港とはまた違うエキゾチックさと観光客の多様さが外国らしさを感じさせる。その後はバスを乗り継ぎ、ターボジェットで香港に戻る。僕にとっては香港もマカオも異国であるが、なぜか香港に戻ってきたらほっとしたような安堵感があった。不思議なものである。

 

429日(月)

 

朝から中国研究服務中心に。延々と資料を見てコピーを取る。中の資料を見て、改めてその豊富さに驚く。しかも、開架式で自由に見ることができる。いろいろと話しには聞いていたが、なんとも贅沢な感じである。今日は疲れたので早めにホテルに戻る。

香港日記(その2)

427日(土)

朝起きて、再び、香港中文大学、中国研究服務中心へ。

本日も調査。『解放軍文芸』なる1951年以降発行された人民解放軍の文芸誌のバックナンバーも見つけてなかなか興味深い。えんえんと『内部参考』を見る。

 

中心内の資料のほとんどは、普通にコピーを取ることができるが、『内部参考』だけがやや特殊だ。『内部参考』をコピーする際、申請者はIDとパスワードをもらう必要がある。IDを登録して、中心内のパソコンにログインをすることで、『内部参考』を画面上で見ることができる。その後に画面を見ながら、プリントボタンを押して印刷することになっている。コピーには制限があり、1日と「全体」のコピー量が決められている。僕は最初、一回の訪問につきかと思ったのだが、「永遠に」と言われ、ちょっとびっくりしてしまった。

 

あと、そのパソコン上では、『内部参考』の画像を印刷できるだけなく、記事のタイトル検索もすることができる。これはいろいろなキーワードでやってみると少し面白かった。

 

中心は午前中で閉まると言うことなので、午後は観光に行く。

まず、チムサーチョイのチョンキンマンションに。たぶんインド系の方がすごく多い。香港のもう一面を垣間見る感じだ。中はちょっと『恋する惑星』っぽいような。どうだろうか。

 

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定番のコースを経て香港歴史博物館へ。

 

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なかなか面白い展示。あと日本の香港占領は時間的には短いが、一つのハイライトのようにも大きく描かれていたところが印象的である(僕が日本人だから余計にそのように感じたのかもしれないが)。

 

その後、博物館の近くにあったという、六四記念館、すなわち天安門事件の記念館の閉鎖された跡地でも見てみようかと思ったら、Googlemapは全く別の場所を示している。おかしいなと思って調べてみたら、どうも、別の場所で再開をしたみたいで、それは行ってみたいと思い、早速行ってみることにする。

 

(参考)天安門事件からまもなく30年 記念館が再びオープン 香港

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190426/k10011898241000.html

 

記念館はビルの小さいスペースにあり、少しこぢんまりとしていたが、多くのお客さんがいた。こちらは公式の記録とは違う。香港の歴史の一つを垣間見た気分である。

 

 

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少し休んでいると夕立がやってきたので、急いで帰ることにする。本日はここで店じまいか。

香港日記(その1)

425日(木)

 少し甘く見ていたら、飛行機の搭乗に遅れそうになり焦る。実は初めての香港へ出発。

 午後3時頃、香港に到着。香港のSuicaとも言うべきオクトパスカードと携帯電話のsimカードを買う。simカード購入の際には、店員さんに8日ほど滞在すると言ったら、日本円で千円ぐらいのカードをお薦めされ、それを購入する。設定やカードの入れ替えも全部やってくれるので助かる。simカードを入れ替えると、FacebookTwitter、ショートメッセージ、グーグルマップも使えて大変に便利。

 

それにしても、熱い。日本の東京よりも熱いような。すぐにTシャツ姿に変わる。今回のお目当てである香港中文大学に行こうとするが、やはり時間がなくて断念。

 

ホテルにチェックイン。近くの叉焼大王という店で夕食。味はまずまず。取りあえず休む。

  

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426日(金)

朝、早々に香港中文大学の中国研究服務中心に行く。

 

さし当たり、香港中文大学図書館については、中村元哉さんの投稿の記事を参照。 

村田雄二郎研究室 香港中文大学図書館

https://jdzg.exblog.jp/10024966/

 

図書館ビルの8階と9階が、中国研究服務中心となっている。多くの本が開架式でぶらぶらと眺められるところが良い。知らなかった面白い本をいくつも見る。

 

ここでは、近年、多くの研究者が、1950年代60年代の中国大陸を描く際に使用している『内部参考』を閲覧することができる。『内部参考』は、高級幹部のみが閲覧を許さるという内部発行資料で、中国大陸では一般に閲覧することはできない。

『内部参考』は、当時の一般紙には出てこない多くの「反革命」や「デマ」、「誤り」等々が報道されており、こう言ってはなんであるが、大変に興味深い資料である。図書館の職員さんは大変に親切であり、下手な普通話で話す外国人に対して、丁寧にかつ親切にいろいろと読む作法を教えてくれる。

 

あと、思わぬ収穫であったのは、噂に聞いていた『中共重要歴史文献資料匯編』を多数見ることができたことである。知っている人には当たり前かもしれないが、実は私は初めて見て、なかなか面白い記述を多く確認し興奮する。

 

資料を筆写し、せっせとコピーを取る。久方ぶりの至福の時間である。

 

午後6時前に音楽がなり、閉館となり、ホテルに戻り、夕食をとって休むことにする。

 

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読了、王力雄『私の西域、君の東トルキスタン』(その2)

やっと読み終わった。何かに対して、こんなに時間がかかって申し訳ないと思ってしまっている。もっと早く読めばとも思った。

とは言え、この本を読み終えて、王力雄はすごいなと畏敬の念を持った。そして、直感的な理解であるが、本書における王力雄とウイグル人知識人ムフタルとの対話は、東アジアに「公共圏」というものがあり得るとしたら、こうしたものになるのではないかとも思った。

本書の最後の王力雄のムフタル宛てへの手紙は、予言めいている。ムフタルに対して、彼なりの民族問題の「解決」方法を提示した上で次の様に述べている。

 

「新疆の未来は自然の成り行きに任せることはできないし、窮すれば通ずると期待することもできない。そのような成り行き任せの道では流血と災難が避けられないことがすでに分かっている」

 

それにしても、現状の新疆ウイグルはどうなっているのであろうか。この本で描かれているウイグルの状況は暗澹たるものであったが、おそらくはそれ以上にひどい状況になっているのであろう。

しかし、それを考えるためにも本書はまさに基礎となる書であり、繰り返し読まれる必要があると感じた。

ダウンロードフェスティバル(2019/03/21)に行ってきた

先日、幕張メッセで行われたラウドミュージックの音楽フェスティバル、ダウンロードフェスティバルに行ってきました。

 

皆様、ご存じの通り、フジロックには毎年のように参加しておりますが、サマソニ等の幕張メッセを使ったフェスに行くのは実は初めて。当初、オジー・オズボーンやスレイヤー、アンスラックスが出演、しかもスレイヤーは最後の日本ツアーと言うことで、チケットをとって参加することに決めました(残念ながらオジーはキャンセルで、その代わりがジューダス・プリースト)。

 

割とゆったりと起きて、当日の11時半過ぎに会場入り、記念にフェスのTシャツを買おうとしたが、割と物販はすでに並んでいた。ちょうど、以下の写真のような状態。

まずまず並ぶが、一番オーソドックスなデザインのオフィシャルTシャツがなんと売り切れで、率直に言って頭の悪そうなデザインのTシャツを買う。

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場内に入り、たぶんMAN WITH A MISSIONを聞きながら、昼食のケバブを頬張る。

以下、見たバンドを順にレビュー

  • ヘイルストーム

予習はしてきたが、見るのは初めて。ボーカルの女性の佇まいが、確かになかなか格好が良い。まさに姐さん、ジョーン・ジェットという感じで、思ったよりも良かった。

  • アーチ・エネミー

 こちらも女性ヴォーカル。名前は昔から聞いているが、こちらも初見。迫力あるサウンドでディス・イズ・メタルという感じ。

ステージ・サウンドともに、もう最高。観客も盛り上がって、もみくちゃにされて。想定よりも早くに会場を出て休む。

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  • ゴースト

出演バンドの中ではややメタル要素が薄く、ポップでメロディアスなハードロック。オジーが来たらこんな感じだったのかな。こちらもなかなか魅せる。

スレイヤー待機のため、後ろからまったり見るが、このラインナップの中では、かなり異色なサウンド。とは言え、アンスラックスやスレイヤー、ジューダス・プリーストに挟まれながらも、かき消されずに、存在感を示すポップなサウンドが大変に素晴らしい。全然知らないですが、何となく聞いたことのある曲もあり。キャリアの長さを感じる。あと、ブラックサバスのパラノイドをやってくれたのも、好感度アップであった。

  • スレイヤー

僕にとっては実質的トリのスレイヤー。ライブ開始前に、AC/DCのバック・イン・ザ・ブラックが流れる。テンションが上がってくる。観客から、スレイヤー、スレイヤーというコールがそこかしこから聞こえてきて、人口密集度も凄く上がってくる。

 

ライブは、前のバンドがかすむほどの重低音スラッシュメタルサウンドで、大変に素晴らしかった。

 

そして、最後に、Voのトム・アラヤがステージ前で感慨深げに立ちすくんでたところ、これが僕たちの最後のライブ、みんなありがとう、さみしいよ、それじゃまたね、と言って去っていた(大意)。泣いた。まさかスレイヤーのライブで泣くとは、もう何回でも引退ライブをやってもいいよと思った。

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 スレイヤーで終わった感が半端なく。ロブ・ハルフォード自体はとても良く声が出てたと思うし、ファンにはたまらなかっただろうけど、体力の限界を感じ、途中で放心して、帰ってしまいました。

  • ご飯

いろいろ食べたがケバブと台湾まぜそばがなかなか美味かった。ご飯はフジロックの方が美味しいかな。

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  • 会場

会場は、でっかい体育館みたいな感じであった。バスケコートの両サイドにステージがあり、片方の会場でライブが始まると、もう片方で次のライブの準備を行うという感じだ。こういう構成にすることで、どのバンドもライブ時間が大体1時間で、10分休んだらすぐに別のサイドでライブが始まるという大変に忙しい構成になっている。率直に言って、かなり疲れました。

 

さすがにメタルの祭典だけあって、隙間なくリフやギターソロが詰め込まれている感じだ。これだけのアーティストを一日で見るにはやはりこういう構成は仕方ないのかなとは思いましたが、と言いつつも、もうちょっとまったりできる時間が欲しかったようにも思う。

 

あと、音はなかなか良かったですが、ステージが低くて肝心のアーティストがちょっと見えづらいというのは感じた。これは、幕張メッセという立地上やむを得ない点はあるが。 

  • まとめ

何はともあれ、スレイヤーを筆頭に、今回見たアーティストはどれもなかなか良く、大変に楽しませてもらった。TwitterとHPを確認したら、また来年も開催されるらしい。来年は、パールジャムとかアリス・イン・チェインズとかが見たいですな。

 

楽しみだな。

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香港映画『十年』(字幕版)を見た

前から気になっていて、『現代中国研究』第42号にも日野みどりさんが取り上げておられた香港映画『十年』が、Amazonプライムで見られるというので見た。

 

『十年』は、2015年に「10年後の香港を想像する」プロジェクトとして若手監督5人が作った短編からなるオムニバス映画である。低予算映画の独立系映画でありながら、最終的には香港でもスマッシュヒットを飛ばした映画でもある。

 

最初の「エキストラ」は、国家安全条例の成立を図る中国共産党幹部が、裏で暴力団を動かして議員襲撃の謀略事件を起こす話。最初の話の割にはなかなか入り込めず、出てくる政党名などは何かを暗示しているのかと思ったが、それが分からないのが悲しかった。ただ、インド系の登場人物の描写は、香港の多様性を示しているところと、その割り振られた役割に感じ入るところが多かった。

 

二つ目は、「冬の蝉」、政府が破壊した友人宅に残されたあらゆるものを標本にして「香港」を残そうとする営みを描く。この話は、率直に言って抽象的で分からず、悲しいながら少し退屈であった。

 

他方で、三つ目の「方言」は、タクシーの運転手に普通話[標準中国語]の使用を義務づけられ、上手く話せない主人公が、苦境に陥るという話。普通話の声調がきちんとできない主人公を見て、おまえは俺かと思いつつ、中国中央の権力が浸透していく中で、言語でも在地の言葉が抑圧されていくという「植民地」的支配が、リアルで個人的に一番、面白かった。

 

四つ目の「焼身自殺者」は、獄中で死去する香港独立運動家の若者、運動に身を寄せるもの、焼身自殺を決行するものを描き、香港とは言え、よく上映できたと思う。このままでは、香港がまさに「独自」の場所でなく、チベットウイグルと同じようになっていくのでは、との危機感を表したものであろう。

 

 最後の「地元産の卵」は、小学校の課外活動「少年軍」が書店・商店を検閲に回り、その姿や描写は、ほとんどまんま文化大革命を彷彿とさせ、「本地」[地元・すなわち香港の意]という言葉さえ、検閲されていく。

 

香港については詳しくはないが、「十年」後の香港を描くSFといいつつも、ほとんどもはや生々しい「現実」の香港を描いているような感じがあった。

 

十年(字幕版)

十年(字幕版)