多余的話

大沢武彦のブログです。

中共重要歴史文献資料彙編について(その3)

さてさて、また覚え書きは続く。たぶん最後なので少しおまけのような覚え書き。

 

表題の資料集について、最近、読んだ辻康吾さんの中国共産党史に関係するエッセイが興味深かった。

中華万華鏡 (岩波現代文庫)

中華万華鏡 (岩波現代文庫)

 

 辻さんは、同書の中で、2010年北京で開催された中国共産党党中央党史工作会議に関する議論を紹介している。その中で、当時の次期党総書記と目されていた習近平が「重要演説」を行い、次の5点を強調したとある

 

一、党史工作の重要性への認識を高める。

二、実事求是の原則を以て党史を研究、宣伝する。

三、党史の学習と教育を強化する。

四、党史工作の科学的レベルを向上させる。

五、党の歴史を歪曲し、醜悪化するいかなる誤った傾向にも断固反対する。(同書、84〜85頁)

 ここで辻さんは第5点目を強調している。中共がこうした点を主張しなければならない大きな要因として、近年、党史の見直しが次第になされていることに中共首脳部が大きな反応を示したものであるとしている。

そして、辻さんは新たな党史の見直しの流れが起こったとするその背景の中に、同資料集の名前もでてくる。それは次のとおりだ。

 

三、「文革」後の改革開放政策のもとで『建国以来毛沢東文稿』など新たに公表された膨大な史料を精査することから実証的な党史の書き直しが進んでいた。また「文革」期の混乱から大量の内部文献が海外に流出したことも大きく影響している(Service Center for Chinese Publication『中共重要歴史文献彙編』など)。(同書89頁)

ここで、辻さんは、同資料集を、文革期の混乱で流出した資料ととらえているところが、個人的には大変に興味深い。何かそれが分かる資料があるのであろうか。もし、お目にかかれる機会があったら、是非にうかがってみたい。何だか、資料集の中身よりも資料集の編纂主体の方に興味がでてきた。

 

そして、前に獨協大学で見た目録によると、同センターはHPを作成して、この膨大な資料集の目録を掲載するつもりであったことが書かれている。それは2003年のことだが、そのHPらしきものは、見当たらない。この覚え書きの続きを書くとすれば、やはりアメリカに行かねばならないかとも思っている。それはいつになるやら。