多余的話

大沢武彦のブログです。

読中、王力雄『私の西域、君の東トルキスタン』(その1)

今、新疆ウイグルが大変なことになっている。

 

そのことについては、あまり贅言を要しない。もう結構前になるが、以下のイベントにも行ってきて、これは大変なことだなと、どうしたら良いだろうと考えさせられた。

【東京】ウイグル強制収容所から奇跡の生還~オムルベク・アリさんが語る~ : アムネスティ日本 AMNESTY

 

で、結構前に、すでに買っていたのだが、我が家に放置されていた王力雄の『私の西域、君の東トルキスタン』を読み始めた。王力雄は漢人の知識人であり、同じくチベット人作家のツェリン・オーセルの夫でもある。その彼が、新疆の問題について、書いた本である。本書を読むと、やはりウイグルの問題は最近の問題ではなく、もっともっと根深い大きな問題が横たわっていることがよく分かる。

 

本書はおおまかに分けて、まえがき、本書のもう一人の主人公であるウイグル人知識人ムフタルとの出会い、ムフタルを訪問した時の旅行記、ムフタルのインタビュー記録、最後にムフタルへの手紙となっている。

 

読むのがなかなか進まず、昨日、ようやく旅行記の場所まで読み進んだ。ちょうど本書の半分ぐらいにあたる。しかし、にもかかわらず、本書は、現在のウイグル問題はもとより中国の民族問題に関心のある人、全員にお勧めできる必読の書となっているということは確信した。

 

まず、冒頭に、王力雄が監獄に入れられ、ムフタルと出会うところから始まる。そこで、王力雄は、監獄に入って初めてウイグル人の本音を聞くことができたという記述がある。そして、「今日の中国でウイグル人漢人を受け入れさせることのできる場所は、たぶん政治犯を収容する監獄だけだろう」という衝撃的なモノローグがなされる。

 

旅行記では、漢人によるウイグル人統治の実態、それはひょっとすると中共ウイグル人に対する「配慮」すら「抑圧」へと変換する実態をもたらすような、まさに「植民地」的な状況が生々しく多く描かれている。

 

個人的にはこの問題は根は深く、空想をたくましくして、中共の政権がもし倒れて、新たな政権ができたとしても、その主体が漢人である限り、この「植民地」的構造は、根深く、さらに生き続けるとしか思えないようなものがすでに成り立っているのではないかと暗澹たる気分にもなったのは事実である。

 

しかし、なんと言っても、民族問題の「解決」、果たしてそれは何であろうかということも考える上で、必読の本となっているのは間違いないし、さらに読み進めよう。

 

私の西域、君の東トルキスタン

私の西域、君の東トルキスタン