多余的話

大沢武彦のブログです。

読了、松沢裕作『自由民権運動−<デモクラシー>の夢と挫折』岩波書店、2016年−

大変に面白くて、勉強になる本でした。

それにしても、前に読んだ『生きづらい明治』もそうでしたが、この著者は、本を書く時のロジックが大変に明晰で分かりやすく、そこが本書の優れた点の一つでないかと思いました

 

自由民権運動の始まりを戊辰戦争から捉えるというのは、ひょっとすると日本近現代史界隈では常識なのかもしれないが、僕にとっては大変に新鮮な見方であり、本書の主人公とも言える板垣退助河野広中との面会のエピソードはイントロとして大変に興味深い。

 

関連して「戦後」にデモクラシーが盛り上がる、これも重要な見方かもしれないとも考えました。

 

 

そして、最後に、以下のように書かれるのは、かなり共感しました。

その反面で、本書は自由民権運動に優しすぎたかもしれないと思う。近代日本を建設したのは先見の明ある政治家と官僚たちなのであって、自由民権運動など近代化の紆余曲折の中で生じた一エピソードに過ぎないと割り切って書くこともできたかもしれない。しかしそうした割り切りも私にはできなかった。少しでも生きやすい世の中を自分たちの手でつくりたい、という自由民権運動を支えてきた人びとの欲求は、また私の中で完全には失われていない欲求でもあったからだろう(216頁)

 

あと、帯の「憲法」はまだか、の意味が分かるとちょっと感動しました。

とても良い本だと思います。