久しぶりに、壮大でエンターテインメント精神に溢れたSF小説を読んだという、そんな高揚感に包まれた。
昨日、Twitterでも呟いたが、今話題の中国SFである劉慈欣『三体』早川書房、2019年のことである。
一応、中国近現代史に関心を持つものとして、中国SFが盛り上がっている状況は、前から割と気にはなっていた。
そうは言いつつも、ノンフィクションばかり読んで、小説からはだいぶ遠ざかっている身としては、なかなか小説を読もうというモードになれなかった。
しかし、つい最近、友人からの熱烈なお勧めもあり、大型連休に入り少し時間もあることから、少し読み始めたら、話の展開に興奮して、もう止まらず、一気に読んでしまった。この本はひょっとするといろいろな読み方ができるのかもしれないが、何よりも良質なエンターテインメントSF小説である。大学生時代はこういう小説をいっぱい読んだなーという感慨もひとしおであった。
(以下は、ネタバレあり)
話は文化大革命時期の中国とおよそ現代と思われる時期の話を行ったり来たりしながら進む。二人の主人公がいるのだが、文化大革命で悲惨な目に遭う女性のエピソードがとてもリアリティがあり、作者がこのような体験をしているか、見聞きしているのかもしれないと思うほどだった(特に文革後のグラウンドのエピソードに心打たれた)。一歩間違うと単なる中二病のような話に、もしかしたらと思わせるようなリアリティを持たせることに成功していると思う。
あと、物理学的な話は、途中からホンマかいなと思いつつ理解するのを諦め、楽しみながら読んだ(智子のところはさっぱり分からんかった)。普段は、当然、物理とか宇宙なんて全く考えないが、この本を読んで、この学問分野って面白いなぁと思った。これは凄いことだ。果たして歴史学にできるであろうか、と自問してしまった。
ちょっと、評価が分かれるのは、最後に出てくる三体星人の描写ではないかなとも感じた。率直に言うと、高度文明人の割には、やっていることが人間と変わらんやんという違和感は少しありましたが。
でも、最後のメッセージはとても素晴らしい。感動的でさえあります。
今年の6月に出るという、続編が大変に楽しみだ。