多余的話

大沢武彦のブログです。

読了、小熊英二『基礎からわかる 論文の書き方』講談社現代新書、2022年

 

 

いろいろと批判はあるのは、承知しているのだが、小熊英二さんの書くものはけっこう好きである。

 

例によって全く面識はないのであるが、大作『民主と愛国』の「あとがき」で、なぜ、こんな分厚い本を沢山書くというお仕事をされているのですか、という質問に、そんなもの分かるはずがないと書かれたことに、その昔、大変に共感した自分である。

 

 

ところが、この本の「おわりに」で、なぜこういう本が必要であるかを大変にロジカルに書かれていて興味深かった。それはこうだ。

 

一つは、こうした本が必要であるとかんがえたこと。要約すれば、専門分化した学問分野をつなぐような本が必要であると感じたこと。

二つ目は、学問分野を超えた対話や相互理解が必要だ、と考えたこと。

そして、三つ目は高校の生徒や大学の学生、あるいは社会で働いている人たちに、学問とは何か、論文を書くとはどういうことか、知ってもらいたかった、と

 

これは大変によく分かる。自分も何となくは分かっていた「つもり」の文章や論文の書き方であるが、これを読むといかに分かっていないかも痛感した本でもある。本書は基礎の「き」であるが、決して馬鹿にしてはいけないとも思う。何だかんだでけっこう何度も参照する本になるだろう。